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書簡形式の作品である「風の便り」。1942年（昭和13年）太宰33歳。自分の小説の方向性を確認するために書かれた作品です。また、太宰とキリスト教（聖書）との接し方も描かれている興味深い短編です。

太宰治の短編集「きりぎりす」から、珠玉の短編を集めました。収録作品は「善蔵を思う」「きりぎりす」「佐渡」「千代女」「風の便り」「水仙」「日の出前」。

1942年（昭和17年）太宰中期の作品で筆が走りまくっていたころの作品です。太平洋戦争さなかの作品ですが、この「水仙」にはほとんど影も見えません。洋画家・林倭衛の夫人だった秋田富子が太宰に送った手紙をヒントに書かれていると言われています。秋田富子さんのお墓は、禅林寺の太宰治の墓の近くにあります。

日本近現代の名作小説や詩を、朗読用に書き下ろされたオリジナルあらすじ台本で味わうシリーズ。

「無頼派」「新戯作派」の破滅型作家を代表する昭和初期の小説家、太宰治の長編小説。初出は「展望」［1948（昭和23）年］。

1930年代に始まった「生活綴り方運動」というのがありました。この作品はそれらに対する太宰の精いっぱいの批判ではないでしょうか。太宰は「書くこと」を通じて個人を型にはめようとすることに対し、鋭い問いを投げかけているように思います。

「トカトントン」は、26歳の復員青年から、創作、仕事、恋愛、デモ、スポーツなど何かやる気が起きると必ず耳に“トカトントン”の音が幻聴で聞こえてきてやる気が失せるという悩みの相談の手紙を受け取った某作家の返信の書簡。

誰でも、今思い出すと恥ずかしくて記憶を永遠に封印したくなることってありませんか。太宰治の生き方は嫌いでも、それでも太宰に惹かれてしまう人が多いのは、この作品のように自分の恥ずかしい過去を包み隠すことなく、淡々と描き切ってしまえるところにあるような気がします。思い当たる人は聴き切るのに勇気が必要、かもしれません。

これも太宰治の作品です。他の作品とはちょっと色合いが違いますが、太宰得意の女性独白体が余すところなくちりばめられています。女性関係ではいろいろアレな太宰ですが、だからこそ、この切ない女心を描けたのでしょう。

太宰治30歳の時の作品で、1940年（昭和15年）に文芸雑誌「新潮」に掲載された短編小説です。太宰が得意とする「女性の一人語り」の作品です。題名の「きりぎりす」は芥川龍之介の代表作「羅生門」の冒頭と最後に、この世の儚さ、荒涼としたさまを表すモチーフとして登場します。芥川龍之介を敬愛してやまない太宰、渾身の作品名と言えるでしょう。

タイトルにある「善蔵」は最後まで出てきません。太宰が甲府から三鷹に越してきて四日目からの私小説です。友人の「故郷なんてものは、・・・・」は、太宰のその当時の故郷への心情を写し取っており、大変興味深い作品に仕上がっています・

太宰治の短編集「きりぎりす」から、珠玉の短編を集めました。収録作品は「燈籠」「姥捨」「黄金風景」「畜犬談」「おしゃれ童子」「皮膚と心」「鷗」。太宰中期の、精神的には一番安定し、筆が走っていた時代の作品集の前半です。

戦時下で言いたいことは言えず、書きたいことも書けない時代の作品です。太宰にしては歯切れの悪い作品になってしまったことは仕方のないことでしょう。ただ、自分の作品の底に流れるものを太宰はここではっきり言っています。

太宰の最初の妻、初代との「水上心中事件」を題材に描かれています。相当部分で事実をなぞっていると言われていますが、太宰が過去を捨てて新たに歩を進める決意が描かれた貴重な作品でもあります。

いわゆる「紀行文」的な小説です。実体験をほぼそのままなぞっているようですが、作者後記で「旅館、料亭の名前は、すべて変名を用いた」とわざわざ断っています。佐渡に行きたくならない「紀行文」ですが、昭和15年31歳の太宰の心の中が偲ばれる小品として評判の高い作品です。

原稿用紙八枚の短編ですが、太宰が後悔と挫折の後にもう一度一歩を踏み出すきっかけになったであろう作品です。最後の５秒に「黄金風景」を見た太宰の言葉が凝縮されています。

今なお読まれ続ける、太宰治の代表作「人間失格」。破滅的な人間を描きながらも読者を魅了してやまない本作から、子供でも読みやすい幼少期時代の場面を抄録。

太宰治が青森県の旧金木町（現五所川原市）に疎開中に執筆した短編。令和６年に東京の古書店で直筆原稿が発見され、三鷹市が880万円で買い入れたことでも話題になりました。短編ですが、戦争をする側と襲われる側の立場をやんわりと描いている名作です。

当初は「花火」という題で発表されたものの、時局上問題あり、という事で雑誌（「文芸」昭和17年10月号）から当局の手によって前面に削除された作品です。

未完成のまま絶筆となってしまった作品です。
深刻な話ではありません。太宰治のユーモアあふれる一面が表れたドタバタです。