Épisodes

  • #14 神戸・大ゴッホ展レポート。名画「夜のカフェテラス」はなぜ生まれたか? オランダ屈指のコレクションで紐解くゴッホの人生と、展覧会の楽しみ方
    Dec 12 2025

    旅先の美術館・アートの楽しみ方をお送りするArTrip Studio。 第14回の旅先は、神戸市立博物館で開催中の「大ゴッホ展」です。

    オランダの「クレラー・ミュラー美術館」から、ゴッホ作品50点以上が来日する貴重な機会。今回の展覧会の面白さは、有名な傑作だけでなく、そこに至るまでの実験や失敗も含めた成長プロセスが見られることです。

    なぜ初期の絵はあんなに暗いのか?パリで受けた衝撃とは?そして、どうやって「夜のカフェテラス」の鮮やかな色彩に辿り着いたのか?

    注目の作品をピックアップしながら解説します。神戸だけでなく、今後は東京でも開催されるので、これから行く際の予習や鑑賞後の振り返りとしてお楽しみください。


    【今回のハイライト:こんなことがわかります】

    ・ゴッホの名作が日本に集結:なぜ今、これだけの傑作が見られるのか? ヘレーネ・クレラー=ミュラーの情熱とコレクション。

    ・オランダ時代の苦労:暗い作風の理由と、孤独と愛への渇望。

    ・パリでの色彩革命:「レストランの室内」の荒い点描と、「石膏像のある静物」による色彩実験。

    ・「夜のカフェテラス」の背景:黒を使わない夜、青と黄色の対比。耳切り事件の3ヶ月前に描かれたアルルの街。

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    32 min
  • #13 大阪万博・壊れゆく大屋根リングの背景と意味、訪問時の思い出
    Dec 11 2025

    旅先の美術館・アートの楽しみ方をお送りするArTrip Studio。 第13回のテーマは、閉幕後に解体が始まった大阪・関西万博のシンボル「大屋根リング」です。

    ニュースで流れる解体映像を見て、皆さんは何を感じましたか? 開催前は無駄遣いとも言われた巨大な木造建築。 しかし、実際に夢洲に降り立ち、強烈な木の香りに包まれながらあのリングの下を歩いた体験を考察しました。

    なぜ、デジタル全盛の時代に「木」だったのか? なぜ、バラバラなパビリオンを「円」で囲む必要があったのか?

    今回は、足が棒になるほど会場を歩き回った一人の来場者としての実体験をベースに、リングの建築美、ヨーロッパや中東など各国のパビリオン、そして大人気のミャクミャクたちが作り出していた熱狂について語ります。


    【今回のハイライト:こんなことがわかります】

    ・原始の森の匂い:ハイテクの祭典を包んでいた、木の香りと伝統工法「貫(ぬき)」。

    ・円環の中のパビリオン:異彩を放つオランダ館、砂漠の風を感じる中東館、アート性の高いフランス館。リングが肯定した多様性。

    ・ミャクミャクとこみゃく:幾何学的なリングへの対比として増殖した、有機的な生命。

    ・解体は終わりではない:一部保存と再利用。循環する建築「大屋根リング」が完成する瞬間。

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    26 min
  • #12 ヴェネチアの裏側へ。フォンダシオン・プラダ「Diagrams」で見た、沈む街の記録と日本の耐震図
    Dec 10 2025

    旅先の美術館・アートの楽しみ方をお送りするArTrip Studio。 今回の旅先は、イタリア・ヴェネチアの「フォンダシオン・プラダ(Fondazione Prada / Ca' Corner della Regina)」です。

    すでに会期は終了してしまいましたが、記憶に残しておきたい企画展『Diagrams(ダイアグラム)』について語ります。

    複雑な路地を歩いて辿り着いた、18世紀の宮殿。 そこで展示されていたのは、世界を理解しようとする「図」や「グラフ」たちでした。

    窓の外に海が見える場所だからこそ刺さる気候変動データのリアリティ。 そして、異国の地でまさかの再会を果たした日本の耐震設計図。 水と戦う街で見る、地震と戦う国の図面。 マクロな建築からミクロな人体まで、見えない構造を可視化しようとする人間の知的な営みについて。

    古びたバロック宮殿での思考の旅をお届けします。


    【今回のハイライト】

    ・カ・コルネル・デッラ・レジーナ:徒歩で向かう迷宮の旅。歴史ある宮殿と現代アートの対比。

    ・切実なダイアグラム:窓の外はすぐ海。沈みゆく街で見る気候変動データが突きつける未来。

    ・日本との意外な接点:イタリアの宮殿になぜ耐震設計図が? 自然に抗う人間の生存戦略としての共通点。

    ・情報の迷宮:すべてを理解できなくてもいい。思考のプロセスを追体験する贅沢さ。

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    13 min
  • #11 ヴェネチア・アカデミア美術館企画展「Stupore, realtà, enigma」。奇才ピエトロ・ベッロッティが描いた、緻密な「嘘」と荒い「真実」
    Dec 9 2025

    旅先の美術館・アートの楽しみ方をお送りするArTrip Studio。 今回の旅先は、イタリア・ヴェネチアの「アカデミア美術館」です。

    以前、アカデミア美術館の常設展を紹介しましたが、今回は訪問時に開催されていた企画展「Stupore, realtà, enigma(驚き、現実、謎)」にフォーカス。 主役は、ヴェネチア美術の空白の17世紀に活躍した奇才、「ピエトロ・ベッロッティ」です。

    彼が仕掛けたのは、鑑賞者を試すような巧妙な「対比」の展示でした。 圧巻は、10年の歳月を経て描き直された2枚の『運命の女神ラケシス』。 美術史的には「緻密な初期作」と「粗い晩年作」とされるこの2枚ですが、実際の絵を前にした時、その印象は逆転しました。 なぜ、緻密な方が「作り物」に見え、粗い方が「リアル」に見えるのか?

    さらに、優雅に微笑む自画像と、口を固く結んで目を剥く自画像の対比。 スタジオを飛び出し路上の人々を描いた『戸外の庶民たち』まで。 美化されたヴェネチアのイメージを覆す、圧倒的なリアリズムと演劇的な世界を、独自の考察を交えて深掘りします。


    【今回のハイライト:こんなことがわかります】

    ・2枚の『ラケシス』のパラドックス:緻密な1654年版に見る「演出された老い」と、抽象化した1660年代版に見る「真のリアリティ」。

    ・演じ分けられた自画像:優雅に微笑む『キソの装い』と、固く口を結ぶ『驚きの寓意』。バロック的な「嘘」の楽しみ方。

    ・『戸外の庶民たち』の衝撃:仮面をつけられない人々。路上の空気に潜む謎。


    【関連リンク】

    Gallerie dell'Accademia: Stupore, realtà, enigma. https://www.gallerieaccademia.it/en/node/3711

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    16 min
  • #10 モーリス・ユトリロ展 in 新宿SOMPO美術館。ユトリロが描いた「孤独な青春」「白の時代」「色彩の時代」の物語
    Dec 8 2025

    旅先の美術館・アートの楽しみ方をお送りするArTrip Studio。 第10回の旅先は、東京・新宿の「SOMPO美術館」で開催中の『モーリス・ユトリロ展』です。

    アルコール依存症の治療として絵筆を握った画家、ユトリロ。 大都会・新宿の喧騒を抜けた先に待っていたのは、彼の魂の叫びが聞こえるような静寂のパリでした。

    今回は、初期から晩年まで、彼の人生を映し出す5つの傑作・展示にフォーカスして深掘りします。 逃げ場のない孤独な青春を描いた『モンマニーの屋根』、白の時代に描かれた『マルカデ通り』、圧巻の連作展示『ラパン・アジル』の執着。 そして、小さな希望を描いた『トルシー=アン=ヴァロワの教会』を経て、晩年の色彩の時代へ。

    一人の人間がキャンバスに塗り込めた苦悩と救いの物語を、等身大の視点で語ります。


    【今回のハイライト:こんなことがわかります】

    ・モンマニーの屋根:治療として始まったアートの原点。暗い屋根に込められた閉塞感。

    ・マルカデ通り:吸い込まれる遠近法。絵の具に石膏を混ぜて作った「壁」の冷たさ。

    ・ラパン・アジルの部屋:なぜ同じ酒場を何度も描いたのか? 狂気すら感じる連作展示。

    ・トルシー=アン=ヴァロワの教会:古びた教会の前に描かれた、小さな「白い少女」の意味。

    ・色彩の時代:孤独な白から、鮮やかな色へ。成功と結婚がもたらした画風の変化とは?

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    14 min
  • #9 マテーラ・洞窟の美術館「MUSMA」。太古の洞窟と現代彫刻が共鳴する、静寂の地下迷宮
    Dec 5 2025

    旅先の美術館・アートの楽しみ方をお送りするArTrip Studio。 第9回の旅先は、イタリア南部の世界遺産・マテーラにある「MUSMA(ムスマ:マテーラ現代彫刻美術館)」です。

    かつて「イタリアの恥」と呼ばれ、廃墟同然だった洞窟住居群「サッシ」。 今や世界中が注目する文化都市へと変貌を遂げたこの街の洞窟の中に、ひっそりと入り口を構える現代美術館があります。

    中に入ると、そこは16世紀の宮殿と、自然の岩山をくり抜いた洞窟が複雑に絡み合う、巨大な地下迷宮でした。

    数千年の歴史を持つゴツゴツした岩肌と、洗練された現代アートのコントラスト。 この場所に深く関わった日本人彫刻家・吾妻兼治郎のエピソード。 そして、洞窟の暗闇で奇妙な音を発していた「銀色の卵」の正体とは?

    今回は、実際に訪れて肌で感じた「洞窟アート体験」と、静寂の中に響く孤独について語ります。


    【今回のハイライト:こんなことがわかります】

    ・マテーラの歴史:石器時代から続く街が、なぜ一度「廃墟」になったのか?

    ・ポマリチ宮殿:「百の部屋」を持つ?半分建てて半分掘られた不思議な建築。

    ・地下の体験:湿度と匂いもアートの一部? 洞窟(ハイポジウム)での鑑賞体験。

    ・吾妻兼治郎:マテーラを愛した日本人彫刻家が残した哲学。

    ・Angelo Gallo『Loneliness』:銀色の卵から聞こえる音。洞窟の静寂で向き合う現代の孤独。

    ・窓からの絶景:現代アートの合間に見る、数千年の歴史を持つサッシの風景。

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    14 min
  • #8 ヴェネチア・フラーリ聖堂。入り組んだ迷路の先に現れる「レンガの大聖堂」と、美術史を変えたティツィアーノの革命
    Dec 4 2025

    旅先の美術館・アートの楽しみ方をお送りするArTrip Studio。 第8回の旅先は、ヴェネチアのサン・ポーロ地区にある「サンタ・マリア・グロリオーザ・デイ・フラーリ聖堂」、通称フラーリ聖堂です。

    入り組んだ路地を抜けた先に、突如として現れる巨大で飾り気のないレンガ造りの教会。 その質素な外観とは裏腹に、一歩中に入ると、そこはヴェネチア派絵画の最高傑作が競演する美の殿堂でした。

    特に必見なのは、巨匠ティツィアーノが放った2つの革命的な傑作。 当時の常識を覆した「動き」のある祭壇画と、マリア様を中心からずらした「構図」の衝撃とは?

    今回は、実際に現地を訪れて圧倒された、建築のスケール感と至高のアート体験について語ります。


    【今回のハイライト:こんなことがわかります】

    ・レンガの大聖堂:「清貧」を誓った修道会が建てた、圧倒的スケールのゴシック建築。

    ・ティツィアーノ『聖母被昇天』:なぜこの絵は「革命」だったのか? 拒否されかけた名画の裏話。

    ・ティツィアーノ『ペーザロ家の聖母』:マリア様が端っこに? アシンメトリー構図の発明と、スポンサーの肖像。

    ・謎のピラミッド:中にあるのは「心臓」だけ? 彫刻家カノーヴァの奇妙な記念碑。

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    12 min
  • #7 ヴェネチア・サン・ザッカリーア教会。ベッリーニ絵画の空間美と、政治が絡んだ教会の裏側
    Dec 3 2025

    旅先の美術館・アートの楽しみ方をお送りするArTrip Studio。 第7回の旅先は、ヴェネチアの隠れた名所「サン・ザッカリーア教会」です。

    サン・マルコ広場から徒歩5分。 静寂に包まれたこの教会は、表向きは神聖な場所ですが、歴史を紐解くと、当時の貴族社会や政治と密接に関わっていた場所でもあります。

    見どころは、美術史に残るベッリーニの傑作「聖会話」。 現実の建築とリンクし、壁に穴が空いたかのような錯覚を起こすこの絵の前で、しばし時間を忘れました。

    今回は、実際に訪れて感じた美しさと、そこに見え隠れするヴェネチアの現実について、等身大の視点で語ります。


    【今回のハイライト:こんなことがわかります】

    ・ファサードの謎:下と上でデザインが違う? 建築家が亡くなって起きた「路線変更」。

    ・ベッリーニ『聖会話』:壁が消える? 現実の空間とリンクする錯覚の絵画。

    ・修道院の歴史:ここは祈りの場か、貴族の社交場か。8人の総督が関わった事件。

    ・幻の地下聖堂:幻想的であり、深刻な現実でもある「水没した地下」の話。

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    13 min