Page de couverture de AIが描くアニメーションの未来──株式会社kaka Creation・飯塚直道プロデューサーが語る「効率化」と「人間にしかできない表現」

AIが描くアニメーションの未来──株式会社kaka Creation・飯塚直道プロデューサーが語る「効率化」と「人間にしかできない表現」

AIが描くアニメーションの未来──株式会社kaka Creation・飯塚直道プロデューサーが語る「効率化」と「人間にしかできない表現」

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アニメーション制作の現場に、AIという新たな波が押し寄せている。今夜のゲストは、その最前線に立つ株式会社kaka Creationのプロデューサー・飯塚直道さん。これまで『ULTRAMAN』や『攻殻機動隊』といった大作アニメに携わってきた経験を持ち、現在はKaKa Technology StudioでAIを活用した新しいアニメーション制作に挑んでいる。まさに“AIアニメーション制作の革命児”と言える存在だ。 飯塚さんは、新卒でサイバーエージェントに入社。その後、プロダクションIGにて6~7年にわたりプロデューサーとして数々の作品を手がけてきた。そうした経験を経て、自身の知見を活かすべく設立されたのがkaka Creationである。立ち上げの背景には「これからの時代にふさわしい、新しいアニメ制作の形を模索したい」という思いがあった。 同社が注目を集めたのは、業界初のAI活用アニメシリーズ『ツインズひな』だ。全カットにAIを取り入れ、背景はほぼAI生成、キャラクターもラフから完成までAIを活用するという、従来の常識を覆す手法で制作された。YouTubeに公開されたメイキング映像では、その工程が公開され「ここまでAIでできるのか」と多くのクリエイターを驚かせた。 とはいえ、AI導入による効率化は一筋縄ではいかない。かつてCGが登場した際も「現場を楽にしてくれるのでは」と期待されたが、実際には複雑な工程が増え、作業はむしろ煩雑になった。AIも同様に、導入の仕方を誤れば混乱を招く危険性がある。そこで重要になるのが、AIやCGの特性を理解し、適切にディレクションできる存在だ。飯塚さんは、制作の最前線でAIと人間の橋渡し役を担った。「CGもAIも分かっていないと正しい指示が出せない。自分がその役割を果たせたのは大きな経験でした」と振り返る。 また、AIに対する社会の目もここ1~2年で変化してきた。かつては「AIは気持ち悪い」「仕事を奪う」といった批判的な声も多かったが、今や身近にChatGPTを使う人も増え、現場でも活用が現実的な選択肢として認識され始めている。実際に飯塚さんが匿名で公開したAIショートアニメでも、批判はほとんどなく、むしろ「もっとやれ」という肯定的なコメントが多く寄せられたという。 ただし、地上波アニメとなると話は別だ。視聴者に「違和感」や「不快感」を与えてしまうリスクは許されない。飯塚さんは「最終的には人間の手で修正を重ねることでクリアした」と語る。AIが全てを代替するのではなく、人間の感覚や判断を補完する形で共存させることが、現段階での最適解といえるだろう。 さらに「AIは人間の仕事を奪うのか?」という問いに対しても、飯塚さんは明確な考えを持っている。「やりたくない仕事をAIに任せればいい。若いクリエイターには、修行のためと称される単純作業に時間を費やすのではなく、本当にやりたい演出や監督業に集中してほしい」。AIの存在は、人間のクリエイティビティをより引き出すための武器になり得るのだ。 そして未来の話題に及ぶと、飯塚さんは『攻殻機動隊 SAC_2045』を引き合いに出した。同作はシンギュラリティ=2045年問題をテーマにしていたが、今やその年が現実味を帯びてきているという。「1週間前と今日で世界が変わるほどの進化を体感している。2045年のシンギュラリティは、決して絵空事ではない」と語る。 ただし、AIが高度化すればするほど、人間にしかできないことの価値は逆に高まると飯塚さんは強調する。旅行や体験、宗教や哲学といった精神的な領域はAIが代替できない分野だ。技術が進むほどに「人間らしさ」が重視される時代になる。 「AIが全て肩代わりすれば、人は余白を得る。そのとき人類は古代ギリシャのように哲学を発展させるのかもしれない」。飯塚さんの言葉は、未来のアニメ制作にとどまらず、人類社会そのものへの示唆を含んでいた。 AIと人間の共創が切り拓く未来。その中でアニメーションという文化はどのように変化し、どのように進化するのか。飯塚直道さんの挑戦は、業界だけでなく社会全体に問いを投げかけている。
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