Page de couverture de 「AIで“作画地獄”を終わらせたい」――kaka Creation飯塚直道さんが語る、地上波に挑んだAIアニメと“演出の目”が拓く次の制作現場

「AIで“作画地獄”を終わらせたい」――kaka Creation飯塚直道さんが語る、地上波に挑んだAIアニメと“演出の目”が拓く次の制作現場

「AIで“作画地獄”を終わらせたい」――kaka Creation飯塚直道さんが語る、地上波に挑んだAIアニメと“演出の目”が拓く次の制作現場

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AIがアニメの現場を本気で変え始めている――その最前線に立つのが、株式会社kaka Creation(KaKa Technology Studio)のプロデューサー、飯塚直道さんだ。新卒でサイバーエージェントに入社し、のちにプロダクションI.Gで6~7年、プロデューサーとして『ULTRAMAN』『攻殻機動隊』といった大作に関わってきた経歴を持つ。2023年6月、生成AIの実用化が急加速するタイミングで、元上司の竹原氏らとともにkaka Creationを立ち上げ、「AIを中核に据えたアニメ制作」を掲げたのは必然だった。 同社は、業界でも早い段階からAIを全面導入。話題作『ツインズひな』では“全カットでAIを何らかの形で使用”という方針のもと、背景はほぼAI生成、キャラクターは人が描いたラフやCGモデルを起点に、最終的な線・質感・彩色をAIで仕上げるワークフローを確立した。YouTubeに公開されたメイキングは、既存のアニメーターや監督にも強い刺激を与え、「ここまでできるのか」という驚きと、実装に向けた現実的な関心を呼んだ。 もちろん“楽になる魔法”ではない。かつてCGが導入された際と同様、工程はむしろ複雑化しがちだ。今回の地上波放送に向けては、視聴者の生理的違和感を徹底的に減らすため、人の手による修正を大量投入。AIが生成してしまう“指が6本”といった破綻を100カット単位で直し込むなど、最後は職人的な執念が品質を担保した。要諦は「AIもCGも理解し、適所で指示できる人間」が舵を取ること。飯塚さん自身、クリエイター出身ではないが描画・同人経験もあり、AI/CG/手描きの三領域を横断する“総合演出”の座組を設計して乗り切った。 導入の哲学も明快だ。AI活用には二つの流儀がある。①既存フローの一部をAIで置き換える(自動彩色、中割生成など)アプローチ、②AIの強みを前提に“作り方そのもの”を変えるアプローチ。大規模スタジオは①に寄りやすいが、kaka Creationは少人数や個人クリエイターと組み、②の“新しい作法”を磨くことに重心を置く。Stable DiffusionやRunwayなど既存ツールを組み合わせ、自社サーバーで回せるワークフロー化、プロンプトや社内ノウハウの体系化で、実装の摩擦を最小化している。 世論の空気も変わった。2023年末の情報解禁時は賛否が拮抗したが、制作意図や業界構造の課題を丁寧に発信し続けることで、最終段階の告知では“高評価比率が4割→7割へ”と反転。アニメファンのリテラシーは高く、正面から説明すれば理解は進む――ファーストペンギンとして得た教訓だ。一方、現場では「AIは自分たちの仕事を奪うのでは」という切実な不安も根強い。これに対して飯塚さんは、「やりたくない・価値が低い単純作業をAIに任せ、若手は最初から“演出や監督”といったコア領域に時間を投資すべき」と言い切る。月5万円の“修行”を前提とする旧来の人材育成は、AI時代にはむしろ機会損失だ。 教育の現場からの問い合わせも増えている。大学や専門学校、スタジオの研修担当者が「AI時代に何を教えれば良いのか」と戸惑う中、飯塚さんの答えはシンプルだ。「自分で作って世に出し、フィードバックを回すこと」。小中学生でもAIでアニメを作り、反応を得ながら“演出の目”を鍛えられる時代になる。だからこそ、これからのアニメーターに必要なのは“部品を束ね、体験として届ける設計力”と、AIによる平均化を突き破る“自分の癖(フェティッシュ)を作品に落とし込む力”。 そして未来。『攻殻機動隊 SAC_2045』が描いた“2045年のシンギュラリティ”は、いまや空想ではない。1週間で世界が変わる速度でAIは進化している。だが技術が進むほど、人間にしかできない領域――旅や体験、宗教・哲学といった精神世界――の価値は増すはずだ。AIが単純労働を肩代わりし、人は“考えること・感じること”へ回帰する。制作現場においても、AIは“表現の自由を広げるための装置”であり、目的そのものではない。 「AIで“作画地獄”を終わらせ、演出に人間の時間を取り戻す」。kaka Creationの挑戦は、アニメ産業の働き方と教育、そして表現の未来を同時に更新していく。地上波に踏み出した一歩は、誰もがアニメを作れる時代...
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