• AIが描くアニメーションの未来──株式会社kaka Creation・飯塚直道プロデューサーが語る「効率化」と「人間にしかできない表現」
    Sep 4 2025
    アニメーション制作の現場に、AIという新たな波が押し寄せている。今夜のゲストは、その最前線に立つ株式会社kaka Creationのプロデューサー・飯塚直道さん。これまで『ULTRAMAN』や『攻殻機動隊』といった大作アニメに携わってきた経験を持ち、現在はKaKa Technology StudioでAIを活用した新しいアニメーション制作に挑んでいる。まさに“AIアニメーション制作の革命児”と言える存在だ。 飯塚さんは、新卒でサイバーエージェントに入社。その後、プロダクションIGにて6~7年にわたりプロデューサーとして数々の作品を手がけてきた。そうした経験を経て、自身の知見を活かすべく設立されたのがkaka Creationである。立ち上げの背景には「これからの時代にふさわしい、新しいアニメ制作の形を模索したい」という思いがあった。 同社が注目を集めたのは、業界初のAI活用アニメシリーズ『ツインズひな』だ。全カットにAIを取り入れ、背景はほぼAI生成、キャラクターもラフから完成までAIを活用するという、従来の常識を覆す手法で制作された。YouTubeに公開されたメイキング映像では、その工程が公開され「ここまでAIでできるのか」と多くのクリエイターを驚かせた。 とはいえ、AI導入による効率化は一筋縄ではいかない。かつてCGが登場した際も「現場を楽にしてくれるのでは」と期待されたが、実際には複雑な工程が増え、作業はむしろ煩雑になった。AIも同様に、導入の仕方を誤れば混乱を招く危険性がある。そこで重要になるのが、AIやCGの特性を理解し、適切にディレクションできる存在だ。飯塚さんは、制作の最前線でAIと人間の橋渡し役を担った。「CGもAIも分かっていないと正しい指示が出せない。自分がその役割を果たせたのは大きな経験でした」と振り返る。 また、AIに対する社会の目もここ1~2年で変化してきた。かつては「AIは気持ち悪い」「仕事を奪う」といった批判的な声も多かったが、今や身近にChatGPTを使う人も増え、現場でも活用が現実的な選択肢として認識され始めている。実際に飯塚さんが匿名で公開したAIショートアニメでも、批判はほとんどなく、むしろ「もっとやれ」という肯定的なコメントが多く寄せられたという。 ただし、地上波アニメとなると話は別だ。視聴者に「違和感」や「不快感」を与えてしまうリスクは許されない。飯塚さんは「最終的には人間の手で修正を重ねることでクリアした」と語る。AIが全てを代替するのではなく、人間の感覚や判断を補完する形で共存させることが、現段階での最適解といえるだろう。 さらに「AIは人間の仕事を奪うのか?」という問いに対しても、飯塚さんは明確な考えを持っている。「やりたくない仕事をAIに任せればいい。若いクリエイターには、修行のためと称される単純作業に時間を費やすのではなく、本当にやりたい演出や監督業に集中してほしい」。AIの存在は、人間のクリエイティビティをより引き出すための武器になり得るのだ。 そして未来の話題に及ぶと、飯塚さんは『攻殻機動隊 SAC_2045』を引き合いに出した。同作はシンギュラリティ=2045年問題をテーマにしていたが、今やその年が現実味を帯びてきているという。「1週間前と今日で世界が変わるほどの進化を体感している。2045年のシンギュラリティは、決して絵空事ではない」と語る。 ただし、AIが高度化すればするほど、人間にしかできないことの価値は逆に高まると飯塚さんは強調する。旅行や体験、宗教や哲学といった精神的な領域はAIが代替できない分野だ。技術が進むほどに「人間らしさ」が重視される時代になる。 「AIが全て肩代わりすれば、人は余白を得る。そのとき人類は古代ギリシャのように哲学を発展させるのかもしれない」。飯塚さんの言葉は、未来のアニメ制作にとどまらず、人類社会そのものへの示唆を含んでいた。 AIと人間の共創が切り拓く未来。その中でアニメーションという文化はどのように変化し、どのように進化するのか。飯塚直道さんの挑戦は、業界だけでなく社会全体に問いを投げかけている。
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  • 「AIで“作画地獄”を終わらせたい」――kaka Creation飯塚直道さんが語る、地上波に挑んだAIアニメと“演出の目”が拓く次の制作現場
    Sep 4 2025
    AIがアニメの現場を本気で変え始めている――その最前線に立つのが、株式会社kaka Creation(KaKa Technology Studio)のプロデューサー、飯塚直道さんだ。新卒でサイバーエージェントに入社し、のちにプロダクションI.Gで6~7年、プロデューサーとして『ULTRAMAN』『攻殻機動隊』といった大作に関わってきた経歴を持つ。2023年6月、生成AIの実用化が急加速するタイミングで、元上司の竹原氏らとともにkaka Creationを立ち上げ、「AIを中核に据えたアニメ制作」を掲げたのは必然だった。 同社は、業界でも早い段階からAIを全面導入。話題作『ツインズひな』では“全カットでAIを何らかの形で使用”という方針のもと、背景はほぼAI生成、キャラクターは人が描いたラフやCGモデルを起点に、最終的な線・質感・彩色をAIで仕上げるワークフローを確立した。YouTubeに公開されたメイキングは、既存のアニメーターや監督にも強い刺激を与え、「ここまでできるのか」という驚きと、実装に向けた現実的な関心を呼んだ。 もちろん“楽になる魔法”ではない。かつてCGが導入された際と同様、工程はむしろ複雑化しがちだ。今回の地上波放送に向けては、視聴者の生理的違和感を徹底的に減らすため、人の手による修正を大量投入。AIが生成してしまう“指が6本”といった破綻を100カット単位で直し込むなど、最後は職人的な執念が品質を担保した。要諦は「AIもCGも理解し、適所で指示できる人間」が舵を取ること。飯塚さん自身、クリエイター出身ではないが描画・同人経験もあり、AI/CG/手描きの三領域を横断する“総合演出”の座組を設計して乗り切った。 導入の哲学も明快だ。AI活用には二つの流儀がある。①既存フローの一部をAIで置き換える(自動彩色、中割生成など)アプローチ、②AIの強みを前提に“作り方そのもの”を変えるアプローチ。大規模スタジオは①に寄りやすいが、kaka Creationは少人数や個人クリエイターと組み、②の“新しい作法”を磨くことに重心を置く。Stable DiffusionやRunwayなど既存ツールを組み合わせ、自社サーバーで回せるワークフロー化、プロンプトや社内ノウハウの体系化で、実装の摩擦を最小化している。 世論の空気も変わった。2023年末の情報解禁時は賛否が拮抗したが、制作意図や業界構造の課題を丁寧に発信し続けることで、最終段階の告知では“高評価比率が4割→7割へ”と反転。アニメファンのリテラシーは高く、正面から説明すれば理解は進む――ファーストペンギンとして得た教訓だ。一方、現場では「AIは自分たちの仕事を奪うのでは」という切実な不安も根強い。これに対して飯塚さんは、「やりたくない・価値が低い単純作業をAIに任せ、若手は最初から“演出や監督”といったコア領域に時間を投資すべき」と言い切る。月5万円の“修行”を前提とする旧来の人材育成は、AI時代にはむしろ機会損失だ。 教育の現場からの問い合わせも増えている。大学や専門学校、スタジオの研修担当者が「AI時代に何を教えれば良いのか」と戸惑う中、飯塚さんの答えはシンプルだ。「自分で作って世に出し、フィードバックを回すこと」。小中学生でもAIでアニメを作り、反応を得ながら“演出の目”を鍛えられる時代になる。だからこそ、これからのアニメーターに必要なのは“部品を束ね、体験として届ける設計力”と、AIによる平均化を突き破る“自分の癖(フェティッシュ)を作品に落とし込む力”。 そして未来。『攻殻機動隊 SAC_2045』が描いた“2045年のシンギュラリティ”は、いまや空想ではない。1週間で世界が変わる速度でAIは進化している。だが技術が進むほど、人間にしかできない領域――旅や体験、宗教・哲学といった精神世界――の価値は増すはずだ。AIが単純労働を肩代わりし、人は“考えること・感じること”へ回帰する。制作現場においても、AIは“表現の自由を広げるための装置”であり、目的そのものではない。 「AIで“作画地獄”を終わらせ、演出に人間の時間を取り戻す」。kaka Creationの挑戦は、アニメ産業の働き方と教育、そして表現の未来を同時に更新していく。地上波に踏み出した一歩は、誰もがアニメを作れる時代...
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  • AI時代のエンタメ革命と未来像:株式会社ワンエーカー折茂賢成氏が語るTikTokとAI戦略
    Aug 28 2025
     今回のゲストは、株式会社ワンエーカー代表取締役・折茂賢成さん。元ゲーム業界出身という異色のキャリアを経て、令和のエンタメ業界に革命を起こす「ショート動画マーケティング×AI」の第一人者です。 折茂さんが率いるワンエーカーは、TikTokをはじめとするショート動画を軸に、実店舗プロモーションからゲーム開発、さらにはドラマ制作まで幅広く展開。「ショート動画をただのコンテンツではなく、“顧客を呼び込む装置=トラフィック元”として活用する」独自の戦略で、次々とヒットを生み出しています。無駄な事業は潔く手放し、勝ち筋に集中するそのスタンスも注目すべきポイントです。 AIへの着目は2021~2022年のGPT登場初期から。最近では、人気キャラクター「ケツアゴ姉さん」のAI VTuber開発に携わり、コメントを即座に音声で返す技術の完成度を語りました。その一方で「日本語とAIの相性の悪さ」を指摘。だからこそ、コンテンツを強く求めている東南アジアなど海外市場に向け、英語をベースにした開発を推奨しています。国内の“供給過多”に陥るエンタメ市場に対して、新たな突破口を示しているのです。 さらに折茂さんは、AI時代に必要な人材像として「頭脳明晰でコードも書け、AIを使って何でも作れるマルチ人材」をまず採用し、後から専門性を育むという独自の人材戦略を披露。AI社会の未来予測では、かつて「500年後」と見ていた世界が、いまや「80年後」に迫っていると語ります。やがて「人類の10%だけが働けばよく、残りはベーシックインカムを得て“おもろいこと”を追求する時代が来る」と大胆に展望しました。 そんな未来においてエンタメはどうなるのか――折茂さんの答えは「エンタメのリンネ(輪廻)」。観るだけの“鑑賞”から、共有し、参加する“体験”へ。ライブや舞台といったリアル興行が再評価され、SNSを通じて広がるコミュニティとともに、新しいエンタメのサイクルが始まると強調しました。
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  • 株式会社ワンエーカー代表・折茂賢成氏が語る「AI×エンタメの未来」
    Aug 28 2025
    株式会社ワンエーカー代表・折茂賢成氏が語る「AI×エンタメの未来」 TOKYO FM「鷹の爪団の人工知能、ちょっとこい」のポッドキャスト限定コンテンツに、株式会社ワンエーカー代表取締役・折茂賢成さんが登場!元ゲームクリエイターという異色の経歴を持つ折茂さんが、AIを活用したエンタメの最前線と、グローバル戦略のビジョンを熱く語りました。 「1エーカーの森」から始まる幸せの輪 社名「ワンエーカー」の由来は、くまのプーさんの「百エーカーの森」。“限られた1エーカー=約4000㎡の人々をまず幸せにする”という哲学が込められています。世界を一気に変えるのではなく、身近な幸せの輪を広げていく――そんな堅実かつユニークな理念のもと、ワンエーカーはショート動画マーケティング、ゲーム開発、ショートドラマ制作、さらには眉毛サロンまで幅広い事業を展開。広告とプロダクトを一体と捉え、「マーケットインでヒットを狙う会社」として走り続けています。 AI VTuberの挑戦 折茂さんが特に注力しているのが、AIを活用したVTuber開発。「ソ谷のアニメっち」で人気の「ケツアゴ姉さん」をAI VTuber化し、コメントにリアルタイムでツッコミを入れる仕組みを構築。YouTubeのガイドラインに沿って“ユーモアを残しつつ安全に”運営する工夫も語られました。さらに過去にはTikTokで「つなちゃん」というAI VTuberを展開し、ライブ配信のみで10万人フォロワーを獲得。Unityを使い、投げ銭でバラが降るギミックなどの演出も実現しました。 ゲーム開発を変えるAIの力 AI活用のインパクトは、意外にも「ゲームプランナー業務」に。これまで人力で行っていた数値設計やバランス調整を、GPT-5を活用することで一瞬でシミュレーション可能に。開発期間が最大5ヶ月短縮され、その分クリエイティブに集中できるようになったと言います。折茂さんはまた、画像生成AIや動画生成AI(Midjourney、Veo 3など)も積極的に活用。特にVeo 3については「日本文化をよく理解した映像が出てくる」と高評価しました。 グローバル市場と「大IP時代」 ワンエーカーの次の一手はグローバル展開。「パルワールド」の成功を例に挙げながら、日本市場の厳しさを踏まえ、まずは東南アジアやアメリカで先行リリースを計画中とのこと。欧米の若者が日本のアニメに熱狂する現象を追い風に、海外から攻める戦略を明かしました。 さらに折茂さんは、現在は「大IP時代」にあると指摘。クレヨンしんちゃんやポケモンなどの人気IPが“品質保証マーク”のように信頼を担保し、商品やサービスの価値を押し上げる現象を解説。エンタメは単なる娯楽を超え、生活の安心感すら提供する時代に入っていると言います。 まとめ 今回のポッドキャストでは、AIがもたらす制作現場の変革、東南アジアやアメリカを視野に入れたグローバル戦略、そして「IP」が経済を動かす未来像まで――折茂賢成さんの先見性と実践力が詰まった内容となりました。 エンタメの「今」と「これから」を知りたい方、必聴のセッションです。
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    29 min
  • 宇宙の謎を解いた男が挑む!感情を持つAIの最前線
    Aug 21 2025
    ポッドキャストでは、SpiralAI代表の佐々木雄一さんが、なぜ自社でAI開発を行うのか、その詳細な背景を語ります。 彼はChatGPTが2022年11月にリリースされた時の衝撃を「裏に人がいるのではないか」と感じるほどだったと振り返ります。 しかし、多くの人がAIをメール作成などの単なる「効率化ツール」として使うようになり、 当初の「ドラえもん」のようなワクワク感が失われたことに、佐々木さんは大きな悔しさを感じたといいます。 日本のAI開発が米国に遅れをとっている現状への危機感と、エンジニアとしての「作りたかった」という純粋な思いから、
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  • ノーベル賞級の頭脳が挑む!感情と個性を備えた「人間らしいAI」が拓く未来
    Aug 21 2025
    今回は、SpiralAI株式会社の代表・佐々木雄一さんをゲストにお迎え! 佐々木さんは、かつて物の重さの根源であるヒッグス粒子の発見に貢献するなど、 宇宙の謎を解くノーベル賞級の物理学研究に携わった経歴の持ち主です。 その知見を活かし、現在はAIの世界で「感情知能」を重視した、人間らしいAIの開発に挑戦しています。 SpriralAIは、ChatGPTのような大規模言語モデル(LLM)を自社で開発していますが、その最大の特徴は 「感情を持った、楽しく会話ができるAI」**を目指している点にあります。 佐々木さんは、AIがメール作成のような実用的な効率化ツールとしてばかり使われ、 当初の「ドラえもんの世界が来た」と衝撃を受けたようなワクワク感が失われていくことに課題を感じていると語ります
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  • 闇の力でホラーを変える!
    Aug 14 2025
    株式会社闇の代表である頓花清太郎さんをゲストに迎え、ホラーとテクノロジーを組み合わせた「ホラテク」の最前線や、AIを活用したホラーコンテンツ制作の現状、AIにまつわる都市伝説や奇妙な体験をご紹介!
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    30 min
  • AIが恐怖を理解する日──映像制作と企画の未来を変える最新進化
    Aug 14 2025
    株式会社「闇」の代表、頓花清太郎さんをお迎えしてお送りするポッドキャスト! かつては人間だけの領域だった「創造」が、AIによって大きく変わり始めています。企画書の作成や映像制作では、従来数日かかっていた作業が、わずか数時間で完了するように。さらに驚くべきは、AIがホラー作品における恐怖の構造や伏線の張り方・回収方法を理解し始めていることです。 もちろん、世代間の価値観や慣習がAI導入の壁になる場面もあります。しかし、それを乗り越えた先には、AIが人間の創造性を引き出し、より本質的で価値あるクリエイティブに集中できる未来が待っています。 業務効率化のツールから、共創のパートナーへ──AIの進化が切り拓く新しい時代の扉が、今まさに開こうとしています。
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    30 min